江戸の本屋で木札を整える蔦重の日本画風イラスト

正しくより楽しく…蔦屋重三郎が“身上半減”から咲かせた江戸の灯

リードあいさつ

 皆さん、こんにちは。先日、大河ドラマ『べらぼう』を二週続けてみました。

 主役・蔦屋重三郎(蔦重)の信条はただ一つ…「正しくより楽しく」

 幕府の厳罰すら笑いに転じ、逆境を商機に替えて人の心を耕す。 

 その姿に、私たちが日々の勤めで大切にすべき“よろこびのはたらき”を顧みました。

本稿の要点

  • 逆境を企画へ:発禁・投獄からの「身上半減」。蔦重は店先に「身上半減ノ店」と掲げ、罰を“話題”に変えて集客。
  • 文化の火を守る:古典の選集や喜多川歌麿の美人画企画で、沈みかけた江戸の娯楽に再点火。
  • 人を育てる胆力:若き滝沢馬琴・葛飾北斎の出会いをつくり、物語と絵の化学反応を後押し。
江戸の本屋で木札を整える蔦重の日本画風イラスト
江戸の本屋で木札を整える笑う蔦重の日本画風

「正しいより楽しい」へ

 田沼から定信へ。倹約と取締が強まるなか、蔦重は“清廉”を掲げるだけでは民の心は晴れないことを知っていました。

 人は正しさだけで動かない。楽しいから動く。 そこに、出版人としての使命を見いだします。

“身上半減”という試練

 御法度の本で幕府の逆鱗に触れ、家財は畳まで半分。店は見る影もなく、誰もが沈む…はずでした。

 ところが江戸っ子は好奇心のかたまり。

 「半分になっても潰れない本屋」は一躍評判に。蔦重は、罰を企画へと反転させます。

罰を笑いに、逆境を企画に。身上半減を話題に

笑いと復刻、そして歌麿

 人は懐かしさと新しさのあいだで心が躍る。蔦重は名作の選集を仕立て、さらに歌麿の筆を再び世に開かせます。

 迷うな。お前にしか見えないものがある。見える者が描かねば、誰にも見えぬまま消えてしまう。

 師・石燕の言葉に励まされた歌麿は、牡丹を写し取りながら、心の靄を払うように筆を進めていく…以前のシーン🎬ですが、歌麿の魂の琴線。

師・石燕の言葉で歌麿は牡丹の筆を取る

出会いをつくる力

 やがて店には馬琴と北斎。物語と言葉、線と色が交差し、のちの大仕事へとつながる“場”が生まれます。

 蔦重が守ったのは“正しさ”の看板ではなく、生きる喜びの火でした。

 私たちもまた、日々の信仰と実践の中で、人の心に灯をともしてゆきたい…そう感じた作品でした。