はじめに
夜明けの一筋の光が、稲束と心をやさしく照らす。遥拝のコトバがはるか朝空を駆けめぐり、感謝が本日の最初の一歩になる。
◇ 祈りは東(神宮遥拝)に、光は胸の内に
昨日早朝5時40分、顕斎殿のかすかなきらめきの中で、伊勢へ向けた神嘗祭の遥拝式を敢行されました。
東の稜線から立ちのぼる朝陽は、今年の実りが「当たり前」ではないことを静かに教えてくれます。

◇ 新穀を捧げ、光を仰ぐ…神嘗祭の一日
神嘗祭は、新穀を天照大御神にお供えして感謝をささげる、神宮で最も由緒深い祭典の一つ。
16日から深夜と未明に二度の由貴大御饌が斎行され、17日正午の奉幣へと続きます。秋の実りに感謝し、五穀豊穣と国民の平安を祈る祈りは、25日まで別宮・摂社・末社へと連なっていきます。

◇ 朱橋にともる灯、東雲の色…水面にも映る
当本宮神殿には、奉納の稲束——〈懸税(かけちから)が並び、初穂として祈りのかたちを静かに示しています。
遥拝を終えて振り向けば、東雲の空に淡い光が射し、朱橋の灯が 水面に揺れて、露を含んだ砂利がほのかにきらめきます。
育て、刈り、束ね、捧げる——その一連の営みは、自然と人を結ぶ「むすび」の記憶として、陽光とともに胸に刻まれました。

※伝承メモ:倭姫命の巡幸にまつわる物語では、真名鶴のもたらした稲から八握穂が生じ、その米を炊いてお供えしたと伝えられます。懸税の心は、実りを“そのまま”捧げる所作に今も息づいています。
◇ 神無月の黎明、むすびあうひかり
本日のはじめ、静かな一礼を。朝陽のあたたかみが胸に残るうちに感謝を行いへ…それが神嘗祭の朝から贈り物。
<俳句>
神無月 朝のひかりに むすび立つ
